本日のインプット:家計の債務延滞状況(→昨日書いたもの)

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2019/11/15 | 重見 吉徳

昨日、ニューヨーク連銀は、第3四半期の『家計の債務および信用に関する四半期レポート』を公表しています。

少し確認をしてみましょう。

まず、家計の債務残高のうち、どのくらいの割合が「延滞」しているのかを、延滞の期間別で確認してみます。

出所:ニューヨーク連銀、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年11月13日時点で取得可能な最新のものを掲載。


リーマン・ショック前と比べると、「債権回収・差し押さえ・引き当て済み案件」の割合が大きくなっています。


次に、ローン種別の延滞率の動向です(→90日以上延滞しているもの。デフォルト案件を含む)。

出所:ニューヨーク連銀、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年11月13日時点で取得可能な最新のものを掲載。


学生ローンの延滞率の高さが目に付きます(→直近が学生ローン残高の10.9%)。

しかし、ニューヨーク連銀は、学生ローンの延滞率を、実際には、この2倍程度の水準と見積もっています。

レポートの脚注には、次のような記述があります(PDFのp2)。

"2 As explained in a 2012 report, delinquency rates for student loans are likely to understate effective delinquency rates because about half of these loans are currently in deferment, in grace periods or in forbearance and therefore temporarily not in the repayment cycle. This implies that among loans in the repayment cycle delinquency rates are roughly twice as high."

「2 2012年のレポートで指摘したように、学生ローンの延滞率は、実際の延滞率を過少に見積もっている可能性が高い。なぜなら、学生ローン残高の約半分は返済猶予期間にあり、一時的に返済期間に入っていないためである。すなわち、返済期間に入っているローンに対して、延滞率を考えれば、学生ローンの返済延滞率は、おおよそ2倍程度の高さであると考えられる。」(→拙訳)


ここで、「返済猶予期間」とは、簡単に言えば、在学期間中です。その2012年のレポートに記述がありますが、例えば、連邦政府が貸与する学生ローンの場合(→学生ローンの多くを占めます)、卒業するまで、返済は始まりませんし、卒業後、6ヵ月間の返済猶予を求めることができます。


次に、自動車ローンの延滞率は上昇を続けており、現在の水準は、リーマン危機直後(2009年)の水準に近づいています。

クレジットカード・ローンの延滞率は、まだ比較的低位と言ってよいでしょう。


最後に、住宅ローン金利と、クレジットカード・ローン金利を比較してみます。

出所:米連邦準備制度理事会(FRB)、米連邦住宅金融抵当公庫(FHLMC)、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年11月13日時点で取得可能な最新のものを掲載。


住宅ローン金利は低下していますし、これが、住宅市場の回復を促しています。

一方で、クレジットカード・ローン金利は、20年ぶりの高水準です。

クレジットカード・ローンの延滞が増えずとも、家計が金利負担の増加に直面し、

  1. 借り入れ残高を増やさなくなると、消費の勢いが落ちますし、
  2. 債務返済(=借り入れ残高減少=ディレバレッジ)に移れば、景気は悪化します。

まだ、そうした状況にはありませんが、今後とも要ウォッチです。


債務とは、何かを購入した「形跡」であり、その分、景気は(過去において)押し上げられています。

言い換えれば、債務の拡大が続く限り、景気は拡大を続けます。

しかし、家計や企業の債務を永遠に増やすことは簡単ではありません。やがて、債務残高の拡大や、これに伴う①支出ブームによる金利の上昇、②信用力の低下による信用スプレッドの拡大によって、債務返済費用が収入・所得を上回り始めるためです。