♪ Don't let me down ♪ (がっかりさせないでくれよ)

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2019/8/2 | 重見 吉徳

FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げを受けたトランプ大統領とマーケットの気持ちです。ビートルズのアルバム、『Let It Be』に収録されている、ジョンの曲です。

私の記憶が正しければ、『Let It Be』というアルバムは、もう一度原点に戻って、「別録り」ではなく、「全員一斉に演奏して、それを録ろう」と試みたアルバムです。アルバムの1曲『Get Back』には、そうしたメッセージが込められています。記録映画も作られ、最後はロンドンのビルの屋上でライブを行いました。

このロンドンのビルの屋上でのライブは、Mr. Childrenの『花 -Memento-Mori』という曲のPVで再現されています。私の勝手な見解ですが、Mr. Childrenは、曲のフレーズや曲名、演奏、ドラムの置き方など、ビートルズへのオマージュが見られます。


FOMCのポイントはドル高

いつもの後講釈ですが、0.25%の利下げを決定した米連邦公開市場委員会(FOMC)のポイントは、「ドル高」だろうと考えています。ここから始めれば、「米株売り」と「米国債買い(長期金利の低下)」が説明できます。

マーケットは「ドル金利はさほど下がらない」として、抜け目なく、ドルを買いました。

ドル高になると、

  • トランプ大統領は困ります(→貿易赤字、景気鈍化、ドル高の裏の原油・商品安)。
  • パウエルFRB議長も困ります(→インフレ圧力がさらに鈍化)。
  • 株式市場も困ります(→既に企業業績が鈍化しているところに、米国企業の海外業績鈍化)。

トランプさんが困れば(→貿易摩擦の圧力)、株式市場がさらに困ります(→不確実性の拡大)。まして、他国が一斉に緩和して、「火に油を注いでいる」わけです(→トランプ大統領が怒る「きっかけ」を作っている)。

パウエル議長は、(利下げ要求の)トランプ大統領を無視できるとしても、株式市場が困るので(→株価下落・センチメント低下)、パウエルさんは困ります(→やっぱり利下げへ)。

今後とも、ドルの堅調地合いが変わらなければ、FRBはさらなる利下げを迫られる可能性があります。


ドル安を狙えば、原油高・商品高も転がり込む?

トランプ大統領がドル安を望むのは、貿易赤字の削減や雇用創出、景気浮揚もあるでしょうが、「商品高や原油高を狙っている」可能性もあります。

ドル安を巡る、ここまでの動きとしては、

  • FRBへの利下げ圧力(→ドル金利を低下させる)
  • ロシアへの制裁(→ロシアは、ドルを手放し、ゴールドを積み上げ。ルーブルでの貿易決済拡大)
  • 中国への貿易戦争(→中国は、ドルを手放し、ゴールドを積み上げ。人民元での貿易決済拡大)
  • イランへの制裁(→ムニューシン財務長官「ドルを使うなら、制裁遵守を」。イランは仮想通貨を一部解禁)

といった形で、ドル安や「ドル離れ」を促してきたように見えます。

プラス、海外メディアで、現在、最もホットな話題のひとつは、トランプ大統領による、『ドルのトーク・ダウン』です。

トーク・ダウンとは、巨額の貿易赤字を抱える(≒ドル安のファンダメンタルズを抱えている)、米国の財務当局者が「ドルは高過ぎる」、「ドル安が望ましい」などと発言することで、投資家のドル買いを抑制したり、ドル売りを誘うことを指します。

先週末に、トランプ大統領は、クドロー国家経済会議(NEC)委員長など経済閣僚を呼んで、「ドル売り介入」について議論しています。ドル売り介入は閣僚によって反対されましたが、一部の報道によれば、トランプ大統領は「引き続き、メディアを使う(≒メディアを使って、ドル安誘導する)」と述べたと伝わっています。

もうひとつは、(ドル安の裏の)商品高・原油高です。

農産品価格の上昇は(トランプ大統領を支持する)農家の支援になりますし、原油高は、資源企業の株価上昇のほか、「民主党支持州(東海岸・西海岸)から、共和党支持州(テキサス州や、シェール・オイルを産出する中西部)への補助金」になります。

「(原油高に伴う)ガソリン高は、支持率低下要因」にも思えますが、米国は世界最大の産油国で、原油の貿易収支はほぼ均衡(バランス)しています。トランプ大統領は、「原油を自給しながら、原油の国際価格を押し上げる」という離れ業をやってのけようとしているのかもしれません。

原油高を巡る、ここまでの動きとしては、

  • ベネズエラへの圧力
  • イランへの圧力
  • トランプ大統領「なぜ我々は中国や日本のために警備活動をしてやっているんだ」

といった形で、原油高を促してきたように見えます。

もちろん、トーク・ダウンは米国債売りにつながる大きなリスクがありますし、中東での地政学リスク拡大はスタグフレーション(=不況下の物価高)を招く恐れもありますが、トランプ大統は(今までのとおり)ギリギリのところをチャレンジするかもしれません。