注意すべき15のチャート①(実体経済編)

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2019/5/21 | 重見 吉徳

米中貿易戦争が今後、深刻化する恐れがある中、米国の個人消費は、思ったよりも余力がない状態かもしれません。中国当局は、思ったよりも実体経済や金融システムの不均衡蓄積を注視しているかもしれません。疑ってみる必要があります。

  1. 先週の米中の経済指標の弱さからすれば、
  2. そして、昨日の日本のGDPの弱さからすれば、
  3. さらに、昨今の「資本逃避の強まり」からすれば、
米国株式や日本株式の動きは幾分、「悠長」にも思えます。


まずは、先週発表された中国の月次指標(4月分)ですが、3月の「リバウンド」から一転、生産や投資、小売売上高は市場予想を下回って、鈍化しました。これらの指標は依然として、「これまでの鈍化トレンドの中にいる」ように見えます。

出所:中国国家統計局、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年5月20日時点で取得可能な最新のものを掲載。



次に、同じく先週に発表された米国の小売売上高統計(4月分)では、このところの耐久消費財や宝飾品の売り上げ鈍化が「トレンド」であることが確認されたように思えます。これらは、高額であり、必需品ではなく、与信(借り入れ)を伴うことも多いアイテムです。①昨年の高所得者向け減税で既に購入・買い替えしていたり、②所得の先行き見通しに関する不透明感が高まっていたり、③既往の借り入れが積み上がったりしている場合には、これらの消費が「先送り」されている可能性があります。

出所:米国センサス局、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年5月20日時点で取得可能な最新のものを掲載。


もっと身近なところでは、フル・サービスを提供する「レストラン」の売り上げが鈍化する一方、セルフ・サービスを伴う「ファスト・フード」の売り上げが伸びているように見えます。

出所:米国センサス局、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年5月20日時点で取得可能な最新のものを掲載。


ニューヨーク連銀が先週に発表した『家計債務および信用レポート』(2019年第1四半期版)では、自動車ローンの延滞率がリーマン・ショック前並みに上昇していることが示されました。一方で、自動車販売は足元で低迷が続いています。

出所:ニューヨーク連銀、WARD's Automotive Group、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年5月20日時点で取得可能な最新のものを掲載。


加えて、住宅ローンを除く、家計の借り入れは伸びが鈍化しています。これらには、クレジットカードの借り入れ、自動車ローン、学生ローンなどが含まれます。例えば、クレジットカード金利は15%を超えており、家計はこれまでに積み上げた債務(約4兆ドル)の返済と金利負担に追われ始めているのかもしれません。

家計が、これらの資金を返済するときには、その分だけ、個人消費が抑制されます。世界経済は、米国の個人消費で支えられており、米国の家計による債務の返済は、世界の生産や企業利益に大きな影響を与えるでしょう。

出所:米国連邦準備制度理事会(FRB)、ニューヨーク連銀、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年5月20日時点で取得可能な最新のものを掲載。


企業景況感指数【下図6のオレンジ】は、生産統計【下図6の紫】に先行します。企業は、日々データで、取引先からの注文や店頭での顧客の往来が増えたり減ったりすることを確認します。企業は、そうした「認知」の後に、生産や設備投資、雇用、賃金の上げ下げなどを判断し、やがて実行に移します。

ISM製造業景況感指数を見る限り、生産はさらに鈍化する可能性があります。その間に、個人消費が再加速しなければ、解雇の増加を含め、景気後退のリスクが高まります。

出所:米国連邦準備制度理事会(FRB)、米国サプライマネジメント協会、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年5月20日時点で取得可能な最新のものを掲載。


その生産統計を項目で見ると、今後は生産が落ち込んでいくと見られます。

まず、①上で述べた耐久消費財や、②中国向けの輸出が大幅に減少している穀物製品の生産は既に、マイナス圏です。普通に考えると、これらは、①耐久消費財の小売売上高が回復する、②中国が大豆、トウモロコシ、小麦などの関税を引き下げるまで回復しないでしょう。

次に、半導体の売上高は今年はマイナスになる可能性が高いとされており(→調査会社IHS Markitによると、今年の半導体市況は前年比マイナス7.4%で、2009年以来の減少率;5/6時点)、今後はファーウェイの問題が「上乗せ」されるかたちで、情報関連の生産はさらに鈍化していく恐れがあります。

出所:米国連邦準備制度理事会(FRB)、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
データは2019年5月20日時点で取得可能な最新のものを掲載。


次に、金融市場での警戒感の高まりや資本逃避の動きを確認します。

「注意すべき15のチャート②(金融市場編)」に続きます。)