気がかりな「2年10年」

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2019/3/28 | 重見 吉徳

1. 「3ヵ月10年」が逆転;それって何?

先週の金曜日に、「米国国債3ヵ月物利回り」と「米国国債10年物利回り」が「逆転」しました。

日本で言えば、「普通預金金利」と「定期預金金利」の関係と同様に、通常は、満期までの期間が短い「3ヵ月国債利回り」のほうが、満期までの期間が長い「10年国債利回り」よりも低くなります。

「逆転」とは、こうした通常の関係とは逆に、「3ヵ月国債利回り」のほうが、「10年国債利回り」よりも高くなってしまう現象を指します。こうした現象は、景気拡大の終盤戦で生じます。

どうしてこのようなことが起こるかは、次のように考えればよいでしょう。

  • 主要国の政策金利(=誘導の対象とする指標金利)は、翌日物(期間1日)の無担保銀行間金利。
  • 考え方①:3ヵ月国債利回りは、向こう3ヵ月間の(毎日毎日の)政策金利の平均値の予想。
  • 考え方②:10年国債利回りは、向こう10年間の(毎日毎日の)政策金利の平均値の予想。

このとき、債券市場が、「向こう3ヵ月の間には利下げ(や景気後退)はないだろうが、向こう10年間の間には利下げ(や景気後退)がありそうだ」と考えれば、「3ヵ月10年」は逆転します。例を挙げて、考えてみましょう。

例えば、FRBが今から1年先に利下げを開始して、やがて政策金利をゼロにまで引き下げ、量的金融緩和をしつつ、8年後に利上げをゆっくりと開始するならば(→前回の利下げ開始は2007年で、利上げ開始は2015年)、向こう10年間の政策金利の平均値は(ゼロに留まる期間が相当長いわけですから)、現在の政策金利(=2.25-2.5%)よりも低くなると考えられます。

すなわち、「3ヵ月10年」のような長短金利が逆転する現象は、債券市場が利下げを織り込み始めた可能性を示唆します。そして、重要なこととして、過去はこれらが逆転した後に、米国の景気後退が訪れているのです

図表を提示する時間がないのが恐縮ですが、「3ヵ月10年」の逆転から得られる、簡潔な示唆は次のとおりです。

  • 過去7回を見ると、景気後退の開始まで「約369日」。
  • 資産クラスで見ると、「ディフェンシブ」色の強い株式(高配当株式やバランスシートが強固な株式など)や、高格付けの債券が優位。
もちろん、日本の個人投資家は、景気後退など気にせずに、長期目線で資産運用を考えるべきです。




2. 気がかりな「2年10年」(若干テクニカル)

もしかしたら、金融市場に詳しい方や弊社のセミナーに参加された方々は、①今までは「2年10年の逆転」を考えてきたのに、なおかつ②「2年10年はまだ逆転していない」のに、なぜ急に、「3ヵ月10年の逆転」を取り上げて議論したり、金融市場は右往左往したりするのか? と思われる方がいらっしゃるかもしれません。

今回は「2年10年が逆転せずに、米国が景気後退に行くパターンも十分にある」と考えています。むしろそうじゃないかと疑っています。

「2年10年」のフラット化が進まず、「逆転」に向かわない事象は、「10年国債利回り」の低下から「逃げる」かのように「2年国債利回り」も低下していることにあります

簡単に言えば、過去の「利上げ打ち止めのケース」よりも、かなり早めの利下げを織り込んでいる恐れがあるということです。これを考えてみましょう。

通常のパターンでは、「利上げ打ち止め」の後しばらくの間、

  • 国債利回りは、全般に低下、
  • 長めの金利のほうがより低下、
します。結果として、イールドカーブ(=満期の短いものから長いものに利回りを並べたもの)は、「2年10年」をその象徴的な存在として、フラット化や逆転がさらに進みます。

過去のパターンを解釈すると、利上げ打ち止め直後は、「目先2年は利下げはないだろうけど、3年後とか、その先には利下げがあるかな??」といった織り込みなので、2年は下がりにくく、10年は下がります。

そして、その先しばらくして、「いざ、利下げだ」というとき、あるいは、実際の利下げ=短期金利の引き下げを確認するときに、イールドカーブはスティープ化します。つまり、利下げによって短期金利は直接的な低下圧力を受ける一方、長期金利は将来の(=利下げ後の)景気・インフレの回復を織り込むため、あまり低下しません。結果として、イールドカーブはスティープ化します。

ただし、今回は「10年」と「2年」がパラレルに下がっています。

これは、先ほど述べたとおり、債券市場が、過去の「利上げ打ち止めのケース」よりも、かなり早めの利下げを織り込んでいる恐れがあるということです(→だからこそ、2年国債が買われて、2年国債利回りが10年国債利回りに負けず劣らず、低下している)。

早期の利上げ織り込み=短期債の買い圧力がある限り、2年10年はフラットニングしません。このまま景況感が悪化したり、「本丸」である米国の企業信用市場の収縮が生じれば、2年10年が逆転しないまま、利下げや景気後退もありえます。

だとしたら、「3ヵ月10年の逆転」から得られる「景気後退まで約369日」は、現実味を帯びるように思えます。