2019年の論点(と勝手予想)①FRBの金利政策

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/12/7 | 重見 吉徳

今日から数回に分けて、「2019年の論点」をお伝えします。第1回目は「FRBの金利政策」です。



現状、得られている情報の読み解き

  • まず、Fedの利上げは、これまでの「緩やかな継続」から、今後は「データ次第」に変わる。
  • その理由は「中立金利への近接」だが、パウエル議長の考えは、①「経済の構造変化の認識≒中立金利や自然失業率の推計には、かなりの不確実性がある」、②「場合によっては、資産価格の上昇に対処する」という2本立てである。
  • 上記①を言い換えれば、「これまでの利上げは不十分かもしれないし、逆に十分過ぎているかもしれない、だったら様子見しよう」という考え方である。「データが強ければ利上げを、弱ければ据え置きに」という具合にである。
  • したがい、金利政策の「様子見への転換」は、これを「利上げの打ち止め」と高を括らず、(まずは)「一時停止」と捉えるべきだろう。→このあたりの議論は、12月4日の こちらこちら の2つのエントリーをご参照ください。


FRBの金利政策に関する(勝手な)予想→変わりますし、外れます。

  • その上で、今後の金利政策は、12月に利上げを実施し、同時に、政策スタンスを「データ次第」に変更する。
  • ここからは経済の見通しが入ってくるが、2019年1月以降の金利政策は「様子見」=「政策金利の据え置き」に転じると見込む。予想は極めて困難だが、3月の「据え置き」も十分にあり得ると見る。その後は「データ次第」である。
  • 筆者の推計*によれば、10月の大幅な株価下落(Z値=-1.85)や11月の大幅な原油価格下落(Z値=-2.74)はそれぞれ、失業率を0.23%ポイント押し上げ、生産とインフレ率を1.15%と0.63%押し下げる方向に働く。Fedの『デュアル・マンデート(完全雇用と物価の安定)』に鑑みれば、「様子見」が正当化されるショックだろう。
  • 3月の据え置きについては、上記のショックのほか、テクニカルだが、「米中貿易交渉の期限」が(および、意外に「Brexit」も)ハードルである。
  • (補論①:たとえ利上げが「データ次第」としても、12月『Summary of Economic Projections』では、中央値を「2回程度の利上げ」とできるだろう。)
  • (補論②:場合によっては、「ドット・チャート」から、“Longer run”の政策金利≒中立金利の推計値が削除される可能性があるだろう。)
  • (補論③:パウエル議長は、資産市場の過熱も注視しており、仮に、再び株価が(低金利や景況感などを背景に)持続不可能な程度にまで上がる場合には、けん制が考えられる。)


マーケット反応に関する(勝手な)予想→変わりますし、外れます。

  • 株価は、目先は「日々の値動きは激しく、行ったり来たり」と見込む。概して、2018年の「アンコール」である。
  • 12月で利上げを「一時停止」し、これがしっかりと伝達されれば、それは市場予想よりも「かなり早い」ため、マーケットは「まだ金融政策は緩和的で、インフレ懸念が残り、将来の追加利上げもありえる」と思い始める可能性もある(→実際、名目賃金には上昇圧力がある)。
  • (ここで復習すると、イールド・カーブを再びスティープ化させる要因は(それが良いかどうかは別として)、①利上げの一時停止と、②インフレ懸念の2つである。それは金融緩和に近い。)
  • であれば、イールド・カーブは再び、スティープ化する可能性もある。株価も幾分戻る可能性がある。
  • 実際、前回FRBが、2006年6月に、5.25%で利上げを打ち止めした後も、いったんは長期金利が下がったが、インフレ懸念が出て、利上げ再開が予想されたことが2度ほどあった(→「6.5%くらいまで上げるのでは?」との見方があり、2年金利も10年金利も幾分戻った)→当時のチャートは、このエントリー をご参照ください。
  • 加えて言えば、確かに、米国の景気はここからスローダウンしていくと見られ、中国や新興国、欧州の景気は既にスローダウンが顕著であるが、ドル金利の低下やドル安、原油安、中国の財政政策などにより、後者が先に循環的に反発を見せる可能性も完全排除はできない(→若干の延命シナリオ)。
  • いずれにせよ、弱気派にとっては、FRBは決して株価をコントロールすることはできないものの、「FRBが株価を見ている」ことを忘れてはいけないだろう。


*ベクトル自己回帰モデル(ラグ次数3、次数の選択は赤池情報量基準による)に基づく、インパルス応答分析。変数は、WTI価格、S&P500、PCE総合デフレーター(季節調整済み)、鉱工業生産(季節調整済み)(以上は対数階差)、失業率(階差)。データは、1994年1月から2018年9月まで。単位根検定とグレンジャー検定を実施(→帰無仮説を1%水準で棄却)。