今冬の新ドラ(続編)

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/11/14 | 重見 吉徳

さて、一昨日のエントリーでは、『今冬の新ドラ』として、「中国の景気減速」を挙げました。

その登場人物(≒特徴的なマーケットの動き)も、男女7人が繰り広げる懐かしの恋愛ドラマさながら、2014年半ばから2016年頭に似てきたと言えるかもしれません。

いわば『続編』のキャストは、前回と同様、

  • ドル金利の上昇(もしくは先高観)
  • ドル高
  • 原油安
  • 中国の景気減速
  • 人民元の下落(もしくは切り下げ)

です。

当時の日本株は、2014年10月末の『黒田バズーカ第2弾』を経て急速に上昇、早くも同11月には一部の評論家が、株価の上昇(やそうした見通し)を『トリプルメリット相場』の再来(→2014年当時は「円安・低金利・原油安」のセット)と囃していました。

株高はその後も2015年7月まで続き、日経平均株価は6月末から8月初めにかけ、21,000円をうかがう動きを見せました。

出所:日本経済新聞社、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management データは2018年11月13日時点で取得可能な最新のものを掲載。


実際には、「原油安」は中国への過剰な期待の剥落と米国のエネルギー生産の減少を示唆し、「低金利」というよりも、金利の先高観を反映した「ドル高」≒「人民元高」が中国の生産と米国の企業業績の足かせであったことを、我々を含む金融市場は完全に見逃していました。

中国の財新・製造業PMIは2014年7月の51.7をピークに、米国のISM製造業景況指数は同8月の58.2をピークに、いずれも低下トレンドに入り、日経平均株価が高値を追っていた2015年4月にはそれぞれ48.9、51.6まで低下していました。

また、米国の鉱工業生産は2015年4月には前年比でマイナスとなり、同8月には中国経済がドル高≒人民元高に悲鳴を上げ、中国人民銀行が人民元を大幅に切り下げます。いわゆる『チャイナ・ショック』です。

この意味では、原油安に伴うインフレ「期待」の低下を背景に『バズーカ第2弾』を放った黒田東彦・日銀総裁は、バズーカを放つタイミングこそ見誤ったものの、懸念という意味ではあながち間違っていなかったのかもしれません。

出所:日本経済新聞社、米サプライマネジメント協会、Markit、財新、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management データは2018年11月5日時点で取得可能な最新のものを掲載。


いずれにせよ、我々が今回、同じ轍を踏まないためには、中国(や米国)の景気減速がもたらす、日本株の下値目途や調整期間を探ってみることがよいでしょう。

結論を先取りすれば、そしてきわめてシンプルな考え方を適用すれば、今回が『チャイナ・ショック』の再来ならば(→『新冷戦』の始まりという人もいますが)、日経平均株価は20,000円を割り込んでも不思議ではなく、また日柄調整という意味では今後少なくとも半年程度、株価がもたつく可能性があるというものです。

ここで、日本株の強気派から想定される反論は、「今回は既にバリュエーションが低い」というものでしょう。

確かに、直近の日本株のバリュエーションは、現状で既にかなり低い水準であり、株価水準の下方調整は、バリュエーションの観点からは小さいと言えるかもしれません。

しかし、バリュエーションだけでは、株価は語れません。予想業績の下方修正がカギを握ります。

前回は『チャイナ・ショック』の発現と共に、TOPIXの12ヵ月予想利益が2015年9月の109.643から、2016年9月の98.472まで、11ヵ月の間に、約10%引き下げられています。

出所:東京証券取引所、I/B/E/S、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management データは2018年11月5日時点で取得可能な最新のものを掲載。


忘れてはいけないのは、既に米国の経済指標が、資本財受注(設備投資の先行指標)、住宅や自動車販売など、鈍化を始めていることと、半導体市況にも陰りが見られているということです。これらも『チャイナ・ショック』当時と似た動きです(→グローバル経済の鈍化については、11月2日のエントリーをご参照ください)。

たとえ現在のバリュエーションが下限であるとしても、予想業績が今後、10%程度引き下げられるならば、株価は同程度下落しても不思議ではありません。日経平均株価で言えば20,000円割れが視野に入ります。

また、日柄調整としては、前回は11か月間、アナリストの予想業績の引き下げが続きましたが、彼らの認知と反映はラグを持つため(→彼らが引き上げに転じる前には株価は反発に転じている可能性があるため)、これを考慮すれば、少なくとも半年程度の調整が必要とされるかもしれません。

日本株投資は、長期目線が重要です。方法は2つ考えられ、1つは低コストのインデックス・ファンドに積み立て投資を行うこと、もう1つは(短期ではなく)長期の企業・株価成長が期待できるような銘柄を選ぶアクティブ・ファンドにやはり、積み立て投資を行うことでしょう。

出所:東京証券取引所、I/B/E/S、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management データは2018年11月5日時点で取得可能な最新のものを掲載。