今冬の新ドラ

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/11/12 | 重見 吉徳

「マーケットは、流行(はやり)の歌やドラマのようなもの」と言われます。これは、マーケットが「熱しやすく、冷めやすい」さまを表しているでしょう。

また、これと合わせて、「皆が同じことを言い始めると、別のことが起きる」という格言も踏まえておくとよいかもしれません。

この前者に従えば、目先3ヵ月程度のテーマは「中国の景気減速」になりそうです。

後者にならえば、中国経済の景気減速は、今年、評論家が盛んに言及した「貿易戦争」が発生する以前から、別の要因として既に始まり、かつ予見されていたと言えるかもしれません。

次の図は、中国の『財新・製造業PMI』と「中国の新規信用の伸び(前年同月比)」を並べたものです。

出所:Markit、財新、中国人民銀行、China Bond、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management 注:「中国の新規信用」は、社会融資総量(増加分、年初来)から、非金融企業の株式発行(同)を差し引き、地方政府による債券発行(同)を足したものの、前年同月比を 算出。 データは2018年11月12日時点で取得可能な最新のものを掲載。


新規信用を6ヵ月先行させると連動して見えます。「新規信用」は、今年に入ってからマイナスの伸びが続き、直近9月は、前年同月比マイナス32.2%まで減少しています。言い換えれば、中国景気が鈍化している背景のひとつは、中国自身による(以前からの)金融引き締めの結果と言えるでしょう。

中国景気が鈍化している、もうひとつの背景は、米国による金融引き締めでしょう。米連邦準備制度理事会(FRB)が、利上げとドル流動性吸収の両方で引き締めを行っていることを忘れてはなりません。

米国の引き締めは、中国企業によるドル建て債務の利払いや元本返済、あるいは借り換えに圧力をかけるほか、国内の金利(人民元建ての借り入れ金利)を高止まりさせる要因です。他方、政府・金融当局が、資金供給によって国内金利の低下を促そうとすると、ドルとの金利差が縮小することを含め、人民元売り圧力≒資本流出の圧力として、顕在化します。

少し逸れますが、「中国人民銀行保有の外貨準備減少」と「人民元安」とを合わせて考えると、人民銀は、金融市場による「人民元売り」の圧力を、「外貨売り・人民元買い」で一部相殺していると考えられます。人民銀が、「金融市場で人民元を買う」という操作は、「市中から人民元を吸い上げる」のと同じですから、中国国内市場の流動性(≒人民元)は減少している(≒引き締め圧力が生じている)と考えられます。

少し数字を追ってみましょう。

人民元建て社債が発行されるときの参照指標である中国5年国債利回りは2016年10月の2.5%から、昨年10月までに3.9%へと上昇しています。今年に入ってからは3.3%まで低下していますが、これを相殺するかのように、米国5年国債利回りが1.1%から3%まで上昇しています。金利差の縮小が最近の人民元安≒資本流出に一部貢献していると考えられます。

また、中国の非金融部門の信用残高は、2015年8月のチャイナ・ショック直前と比較して、GDP比では、30%ポイント近く上昇しています。この間の名目GDP成長率は26.9%であり(→4四半期合計値を使用)、信用残高(=純借り入れ残高)は金額ベースで41.8%伸びている計算になります。別の書き方をすれば、中国は1元の経済成長を遂げるために、3.6元の借り入れを必要としたということです。

信用の伸びが衰えれば、中国経済への影響は少なくないと言えるでしょうし、それは、日本経済や日本株に小さくない影響を与えるでしょう。

出所:国際決済銀行(BIS)、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management データは2018年11月12日時点で取得可能な最新のものを掲載。


出所:Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management データは2018年11月12日時点で取得可能な最新のものを掲載。