TOPIXのリビジョン・インデックスはプラス圏を維持できるか?

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/9/7 | 前川 将吾

前回(2018/9/6)のブログでは、「ドル高・円安でも、日本株が上昇するとは限らない」という点についてご紹介するとともに、(名目)実効為替レートの重要性に言及しました。その上で、今回のブログでは、この実効為替レートと日本株のリビジョン・インデックスの関係に注目してみたいと思います。

【リビジョン・インデックスと実効為替レートの連動性】

日本株の年末にかけての動向を考えるに当たって、最も注目されている指標の1つが、東証株価指数(TOPIX)のリビジョン・インデックスでしょう。同インデックスは、先月に(今年3月末以降で初めて)プラス圏を回復したことが、金融市場参加者の間で好感されました。そして足元では、この傾向が今後も続くかどうかに注目が集まっています。
この点について考える上で、筆者は、実効為替レートの動向に注目しています。なぜなら、【図1】の通り、リビジョン・インデックスは、実効為替レート(前年比)と連動する傾向が見られるためです。日本には数多くの輸出企業が存在し、その業績が様々な通貨の動向を受けていることを考えれば、このような連動性が見られることは、当然かもしれません。

出所:(左)東京証券取引所、Factset、日本銀行、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
(右上、右下)Citigroup、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
注:(左)リビジョン・インデックスは、上方修正の銘柄数-下方修正の銘柄数。上方修正の銘柄数、下方修正の銘柄数は、今期予想利益、暦年ベース、アナリスト予想集計値、週次ベース。(右上、右下)「エコノミックス・サプライズ指数」もしくは「サプライズ指数」は、さまざまな経済指標に関する実績値(実際に発表された値)と、事前の市場予想値とのかい離の度合いを示す指標。実績値が予想値に比べて上振れする場合、値は大きくなる。
データは2018年9月4日時点で取得可能な最新のものを掲載。

【リビジョン・インデックスは、プラス圏を維持できるか?】

上記の連動性を踏まえたうえで注意しなければならない点は、【図1】の試算で示している通り、仮に実効為替レートが8月末時点から横ばいで推移した場合、年末にかけて、前年比で見た円高が更に進行するということです。つまり、「今よりも円高にならない」だけでは不十分で、「今よりも円安の状況」が継続しないと、リビジョン・インデックスがプラス圏を維持できない可能性がいくぶん高まると言えるでしょう。
前回のブログで言及した通り、実効為替レートで見て円安が進行するためには、“米国経済だけが強い状況”のもとで続いてきた、「ドル円相場はドル高・円安だが、“ドル高 & 円高”でもある」という状況が変わる必要があると見ています。そして、このような観点から、筆者は現時点で次の2点の動向を注視しています。

<注目点①:米国以外の経済が、強さを取り戻せるか?>
例えば、ユーロ圏や新興国の景気減速懸念が払しょくされれば、ユーロや新興国通貨が買い戻される展開になると考えられます。
まず、ユーロ圏については、【図2】の通り、エコノミック・サプライズ指数がプラス圏を回復した(→想定を上回る経済指標の結果が確認されている)ことや、イタリアの財政問題を巡る懸念がやや緩和したことなどが好材料でしょう。今後も、市場参加者の予想を上回る経済指標の発表が続き、英国の欧州連合(EU)離脱が円滑に進むようであれば、ユーロ高・円安が進行するかもしれません。
続いて、新興国については、まだ不安材料が残っています。【図3】の通り、エコノミック・サプライズ指数がプラス圏の回復に失敗したことや、米中の“貿易戦争”が長期化しそうな点などがそれに当たります。ただし、冴えない状況が続いていた中国の内需(特にインフラ投資など)が、政府の景気刺激策によって持ち直す兆しが確認されれば、人民元や資源国通貨などが対円で上昇する可能性があるでしょう。

<注目点②:いったん収まった米連邦準備理事会(FRB)の引き締め懸念が再燃するか?>
米国景気の過熱感が強まると、FRBの金融引き締め観測や新興国からの資金流出懸念が高まり、年初来の“ドル高 & 円高”が更に進行する可能性があるため注意が必要です。この観点からは、好調な米国景気やインフレ率の加速に遅れてやってくる傾向がある「賃金の伸びの加速」が、これから確認されることを警戒しています。

【年末にかけての日本株の見通しは?】

以下の4つの好材料を踏まえれば、日本株は堅調に推移すると見ています。但し、その上昇幅は、“ドル高& 円高”の状況次第で変わってくるでしょう。
(1)世界景気への“過度な”警戒感の後退
(2)日本企業の利益率の改善傾向
(3)他の先進国株と比べた際の割安感
(4)政治の安定(→足元では、今月の自民党総裁選後も安倍首相が続投するとの見方が強まっています)