ドル高・円安でも、日本株高とは限らない?

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/9/6 | 前川 将吾

読者の皆さんの中には、「ドル高・円安が進行すれば、日本株は上がるだろう」という印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか。しかし、今回のブログでは、「そうとは限らない」という点についてご紹介したいと思います。ここでのキーワードは、(名目)実効為替レート*です。

*実効為替レートは、特定の2通貨間の為替レートをみているだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標です。具体的には、対象となる全ての通貨と日本円との間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウェイト付けして集計・算出します。(出所:日本銀行)

【足元はドル高・円安であり、“ドル高 & 円高”でもある】

今年は、昨年の“リスクオンのドル安”とは打って変わって、ドル高が進行しています。これには、巨額減税の効果が出ている米国の景気が力強い一方、その他の国の景気が弱含んでいることや、米トランプ政権の保護主義的な政策などの背景があると考えられます。
ここで、【図1】をご覧ください。為替相場の変調が見られた今年の2月から先月末までの動きを見ると、①米ドル1強の展開になっていること、②その結果、ドル高・円安が進んでいること、③しかし、円はドル以外の主要通貨に対しては、全面高になっている(→言い換えれば、“ドル高 & 円高”になっている)ことなどがわかります。

出所:(左)Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management (右)MSCI、東京証券取引所、日本銀行、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
注:(右)期間は、円インデックスのデータが取得可能な1999年1月~2018年8月。
データは2018年8月31日時点で取得可能な最新のものを掲載。過去のパフォーマンスは将来の成果を示唆・保証するものではありません。

【日本株にとっては、ドル円レート以上に実効為替レートが重要】

恐らく大半の投資家がイメージしている通り、為替の動向は、日本株に大きな影響を与えていると考えられます。実際に、【図2】の灰色で示す通り、日本株は、“円安”(一番左)の時に最も上がり、“円高”(一番右)の時に最も下がる傾向があることが確認できます。
ただし、「ドル円レートよりも、実効為替レートを重視したほうが良い」という点に注意が必要でしょう。なぜなら、①ドル高・円安が進行しても、実効為替レートが円高(左から2番目)であれば、日本株は下落する傾向がある一方、②ドル安・円高が進行しても、実効為替レートが円安(右から2番目)であれば、日本株は上昇する傾向が確認できるためです。
ここで、この傾向を、昨年以降の為替と日本株の動きに当てはめて考えてみましょう。昨年は②の状況、つまり“リスクオンのドル安”のもとで、日本株が上昇した一方、今年は①の状況、つまり“ドル高 & 円高”のもとで、日本株が冴えない状況が続いていると見ています。

【ドル円レートよりも実効為替レートのほうが重要な背景は?】

日本株が実効為替レートに反応している背景としては、主に次の2点が考えられます。
まず第1に、様々な国と貿易をしている日本企業の業績にとっては、当然、ドル以外の通貨の影響も重要だと考えられます。(注:次回のブログで、東証株価指数(TOPIX)のリビジョン・インデックスと実効為替レートの連動性についてご紹介します。)
第2に、世界株と日本株の連動性も関係していると見ています。【図2】のオレンジ色をご覧ください。①“ドル高 & 円高”(左から2番目)の状況下では、世界株全体で見た場合、(新興国株を筆頭に)株価が下がる傾向がある一方、②昨年のような“ドル安 & 円安”(右から2番目)は、世界株が最も上昇しやすい状況となっています。そして、このような世界株の動きに、当然日本株も左右されていると考えられます。