7つのブーム:その8(最終回)ETFブーム

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/6/13 | 重見 吉徳

筆者は、現在の金融市場が次に挙げる「7つのブーム」で支えられている、と考えています。

1. 流動性ブーム
2. 生産効率化ブーム
3. M&Aブーム
4. 自社株買いブーム
5. レバレッジ・ブーム
6. テクノロジー・ブーム
7. ETFブーム

既に、お気づきのとおり、これらは互いに独立しているわけではなく、一方が他方を生み出していたり、互いに作用し合ったりしていると考えられます。いずれにせよ、これらは現在、それぞれの壁に直面しており、「7つのブーム」は「7つのリスク」に姿を変えつつあると、筆者は見ています。強気派にとっては「時間の問題」ですが、弱気派にとっては「時間こそが問題」と言えるでしょう。

本稿は、最終回として、上記7の「ETFブーム」について、考えてみます。


7. ETFブーム

ETF(上場投資信託)、インデックス・ファンドなど、主要な株価・債券指数に連動するパッシブ運用がブームになっています。ここでは、この「パッシブ運用ブーム」を、その象徴的な金融商品の名を冠して「ETFブーム」と呼びます。

ETFや時価総額に連動する運用が直面する壁とは、己自身でしょう。

今は、ETFやインデックス・ファンドを用いるパッシブ運用の最大の弱点が露呈されているタイミングと考えられます。

ETFは、存在が大きくなりすぎることで自身に対する規制の圧力を生み出しているテクノロジー企業と同様、自身をキャンペーンして自身が膨れ上がる過程で、時価総額比率が高まって限界が近づいてきたテクノロジー株式セクターをオーバーウェイトすることで、自身の存在を危険にさらしていると考えられます。

より具体的には、①指数に占めるテクノロジー株式のウェイトが高まっており(→例えば、S&P500指数の30.0%)、なおかつ、②先述の「10年の壁」を考えれば(→時価総額トップ10銘柄のうち、その後10年間で指数をアウトパフォームする銘柄は少数である)、この「ETFブーム」は、同商品への投資家を望ましい方向には必ずしも導いていない恐れがあります。

ETFや時価総額に連動する運用を行うことは、それまでに市場全体を上回って、膨れ上がってきたセクターや銘柄をさらに買い増すことになります。

同時に、テクノロジー株式への偏りを考えれば、「ETFは分散がなされている」という主張はもはや幻想に近いでしょう。

売りと買いのマーケットを作り、資本配分を効率にすべく努め、資本市場が存在するためのコストを負担しているのはアクティブ・ファンドであり、ETFは金融市場のフリーライダーに過ぎません。「ETFはコストが低い」という主張は、資本市場の維持費用を応分負担していない事実を自ら強調しているだけであり、そのことに気づかない投資家を自身へと誘導する結果、自身と資本市場を脅かしていると考えられます。

確かに、買い付け手数料や信託報酬は、長期の資産運用の少なからぬ足かせとなりますが、それは社会的に必要かつ、平等に負担されるべきコストであることを認知させる必要がありますし、まして「アクティブ対パッシブ」という観点から、手数料率の多寡が資産形成に及ぼす影響を示すことは、アンフェアかつ、ミスリーディングと、筆者は強く考えています。


7つのブームが終わるタイミングときっかけ

ブームの重要な経験則は、ひとことで言えば「もうはまだなり」です。筆者には、そのタイミングもきっかけも全くわかりませんが、ブームが7つもあるならば、「準備は万端」としか評価のしようがありません。金融引き締めさえ続けば、これらのブームは終わりを迎えるでしょう。

本稿では、テクノロジー株式とETFを取り上げましたが、この前者については、システム売買が行うモメンタム・トレードの逆回転も大きなリスクでしょう。上がっている銘柄を買い、下がっている銘柄を売るというモメンタム・トレードの存在感が高まっているとされます。一度、テクノロジー株式がアンダーパフォームを始めれば、下げが下げを生むリスクが考えられます。

一方、ETFでは、債券指数に連動するETFが、金融市場全体に下げをもたらすリスクが考えられます。例えば、ハイ・イールド債券市場は、金融規制の影響によって投資銀行が在庫を抱えられないために、その流動性が以前よりもさらに低くなっていますが、不思議なことに、それらを束ねたETFは流動性が高いと思われています。この論理は、高リスクのローンを束ねてトリプルA格を生み出した証券化ブームの発想を想起させます。

リスクはいたるところにあります。日本の個人投資家は十分な注意が必要でしょう。