7つのブーム:その6 テクノロジー株式とETFのフィードバック・ループ

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/6/7 | 重見 吉徳

筆者は、現在の金融市場が次に挙げる「7つのブーム」で支えられている、と考えています。

1. 流動性ブーム
2. 生産効率化ブーム
3. M&Aブーム
4. 自社株買いブーム
5. レバレッジ・ブーム
6. テクノロジー・ブーム
7. ETFブーム

既に、お気づきのとおり、これらは互いに独立しているわけではなく、一方が他方を生み出していたり、互いに作用し合ったりしていると考えられます。いずれにせよ、これらは現在、それぞれの壁に直面しており、「7つのブーム」は「7つのリスク」に姿を変えつつあると、筆者は見ています。強気派にとっては「時間の問題」ですが、弱気派にとっては「時間こそが問題」と言えるでしょう。

本稿では、上記6の「テクノロジー・ブーム」と、上記7の「ETFブーム」の間に生じているフィードバック・ループについて、考えてみます。


テクノロジー株式とETFのフィードバック・ループ

これら2つは、互いが互いの神輿(みこし)を担ぐかのように、ブームにまで発展してきたと見られます。このフィードバック・ループが逆回転するときには、十分な注意が必要です。

データを追う前に、このフィードバック・ループを簡単に説明しておきます。それは、次のようなものです。

・例えばコストの観点で、アクティブ・ファンド(バリュー株式)が解約され、株式市場に連動するETFに資金がシフトすると(=ETFブーム)、時価総額の大きいテクノロジー株式(グロース株式)が市場全体をアウトパフォームする(=テクノロジー・ブームに拍車をかける)

・例えば流動性や将来への期待などで、テクノロジー株式に資金が流入すると(=テクノロジー・ブーム)、テクノロジー株式が市場全体を、市場全体(ETF)がアクティブ・ファンドをアウトパフォームする(=ETFブームに拍車をかける)

という相互循環です。


テクノロジー株式のウェイト上昇とETFへの資金シフト

直近5月末時点で、S&P500指数の時価総額全体のうち、情報技術セクターとインターネット小売セクター(以下、「テクノロジー株式」)が占める割合は30.0%であり、2000年8月(33.6%)以来の高水準に達しています。

ETFとの関連で考える上では、テクノロジー株式の時価総額が指数全体に占める割合(以下、「テクノロジー株式のウェイト」)の変動をつぶさに追うことが第1歩です。

テクノロジー株式のウェイトは、チャート1のとおり、ITバブル崩壊で急低下し、2001年から2008年までは16-17%を中心に変動しました。その後、2009年から2014年までは、米連邦準備制度理事会(FRB)によるフォワード・ガイダンスや量的金融緩和によって長期金利の低位安定が続く中、(テクノロジー企業の多くが属する)グロース株式優位の相場となり、テクノロジー株式のウェイトは、その変動の中心が20%まで上昇しました。さらに2014年終盤からは、原油価格の大幅下落を受け、エネルギー・セクターを追いやり、2016年末には23%付近に達しました。

<チャート1>S&P 500に占める情報技術セクターとインターネット小売セクターの比率(時価総額ベース)

出所:S&P Dow Jones Indices LLC、Factset、J.P. Morgan Asset Management
データは2018年6月7日時点で取得可能な最新のものを掲載。



問題はここからです。テクノロジー株式のウェイトは、上記のとおり、直近が30.0%ですから、2017年から直近までのわずか1年半足らずの期間に、7%ポイントもの上昇を見せています。ただし、その間にマーケット環境は大きな変化を見せました。

FRBはバランスシートの正常化に着手し、原油価格も反転を見せ、S&P500指数はそれまでの急上昇から一転、今年1月末に大幅下落を見せ、その後も低調なままです。こうした変化にも関わらず、テクノロジー株式のウェイトは、以前よりもむしろハイ・ペースな上昇を続けてきました。

他方、米国のETF市場がブームとなったのも、テクノロジー株式へのウェイトが大きく引き上がった2017年以降です。

米国投資信託協会(ICI)のデータによれば、2013年から2016年までの株式ETF(国際株式を含む)への累積資金純流入額は、ほぼ線形に(=同じペースで)伸びており、52週換算の資金流入額は約1,700億ドルです。

2017年以降も、株式ETFへの資金流入額は線形ですが、その傾きは大幅に切り上がっており、2017年から2018年5月までの資金流入額は、52週換算で約3,000億ドルに上ります。

そして、2013年から直近までの累積資金純流入額を見ると、株式ETF(国際株式を含む)は約1兆1,000億ドルのプラスである一方、株式ミューチュアル・ファンド(投資信託;国際株式を含む)は約3,600億ドルのマイナスです。

<チャート2>米国の株式ETFおよびミューチュアル・ファンド(投資信託)への資金純流入金額(単位:億ドル;2013年からの累計)

出所:米国投資信託協会(ICI)、J.P. Morgan Asset Management
データは2018年6月7日時点で取得可能な最新のものを掲載。




テクノロジー株式とETFのフィードバック・ループ

時価総額ベースの主要な株価指数に連動するETFを買うということは、時価総額の大きいテクノロジー株式をオーバーウェイトする効果があります。

直観的には、指数連動のETFにいくら大量の資金が流れても、買い付けタイミングでの各銘柄のウェイト(時価総額比率)で資金が配分されるため、買い付け後もセクターや銘柄のウェイトは変化しないように思えます。

しかし、ETFが買われる裏側で、アクティブ運用が解約されていれば、状況は異なります。伝統的なアクティブ運用はバリュー株式(割安株式)である一方、テクノロジー株式はグロース株式(割高株式)であるため、伝統的なアクティブ・ファンドは、テクノロジー株式をアンダーウェイトしています。

結果として、投資資金が、アクティブ・ファンドからETFにシフトするときには、(アクティブ・ファンドが持っていた)テクノロジー株式のアンダーウェートが解消され(→この解消の動きこそが、テクノロジー株がオーバーウェイトされるアクションです)、テクノロジー株式やグロース株式が、指数全体やバリュー株式をアウトパフォームします。

フィードバック・ループゆえに、その始まりはどこからでもよいのですが、例えば「アクティブ運用が低調」「ETFは手数料が低い」というキャンペーンによって、アクティブ・ファンドからETFに資金が流れたり、低金利政策や資本還元による「カネ余り」の下で、機関投資家の大規模な資金が流動性の高い大型銘柄(テクノロジー株式)に入ったり、自社株買いがこれらの株価をさらに押し上げたりすることなどが、フィードバック・ループが始まったり、強化されたりするきっかけとして挙げられるでしょう。

<チャート3>大型グロース株式と大型バリュー株式の相対株価(Russell 1000 Growth Index / Russell 1000 Value Index)

出所:野村證券、Frank Russell Company、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
データは2018年6月7日時点で取得可能な最新のものを掲載。