7つのブーム:その4 自社株買いブーム

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/6/5 | 重見 吉徳

筆者は、現在の金融市場が次に挙げる「7つのブーム」で支えられている、と考えています。

1. 流動性ブーム
2. 生産効率化ブーム
3. M&Aブーム
4. 自社株買いブーム
5. レバレッジ・ブーム
6. テクノロジー・ブーム
7. ETFブーム

既に、お気づきのとおり、これらは互いに独立しているわけではなく、一方が他方を生み出していたり、互いに作用し合ったりしていると考えられます。いずれにせよ、これらは現在、それぞれの壁に直面しており、「7つのブーム」は「7つのリスク」に姿を変えつつあると、筆者は見ています。強気派にとっては「時間の問題」ですが、弱気派にとっては「時間こそが問題」と言えるでしょう。

本稿では、上記4の「自社株買いブーム」について、考えてみます。


4. 自社株買いブーム

実物資本の期待収益率が低下する一方、企業がトップラインの増加やマージンの拡大による利益増加でも、投資家の要求収益率を達成できないときには、企業は資本家に資本を返すほかありません。その副作用の1つは、株主資本利益率(ROE)や1株利益(EPS)が上昇することでしょう。重要な点は、ROEやEPSは「増加」する指標ではなく「上昇」する指標だということです。

2017年のS&P500指数構成企業による自社株買い金額は、4年連続で5,000億ドルを超えています。今年1-3月期は1,780億ドルと、四半期ベースでは過去最高のペースで推移しており、年間ベースで過去最高だった2007年の5,890億ドルを超えることも視野に入ります。

自社株買いのもう1つの副作用は、株式の供給が減る一方で、マネーは増えるために、株価に上昇圧力が生じるということでしょう。企業と資本家は「自社株買いをすれば、株価が上がる。資本家が株高を喜ぶから、また自社株買いをする」という歓喜の循環を漂っているだけのように見えます。企業と資本家には、2つの副作用こそ効果と映っている可能性があります。

資本家は、利益そのものではなく、1株利益を見ます。言い換えれば、少なくとも現時点の資本家は、アニマル・スピリットに基づく事業投資が呼び込む社会全体の豊かさ(生産性と1人当たり所得)の拡大など見ておらず、資本家個人の利得最大化のみを考えているように映ります。バリュー投資で名を馳せた著名投資家のウォーレン・バフェット氏ですら、アップルの株式に資金を投下したそばから、アップルが自社株買いで資本を返すことを歓迎するほどです。

この自社株買いブームも、レバレッジ(資金借り入れ)ブームと表裏一体であり、前述の金融引き締めの壁と、後述するレバレッジ拡大の壁が立ちはだかります。