7つのブーム:その1 流動性ブーム

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/5/31 | 重見 吉徳

筆者は、現在の金融市場が次に挙げる「7つのブーム」で支えられている、と考えています。

1. 流動性ブーム
2. 生産効率化ブーム
3. M&Aブーム
4. 自社株買いブーム
5. レバレッジ・ブーム
6. テクノロジー・ブーム
7. ETFブーム

既に、お気づきのとおり、これらは互いに独立しているわけではなく、一方が他方を生み出していたり、互いに作用し合ったりしていると考えられます。いずれにせよ、これらは現在、それぞれの壁に直面しており、「7つのブーム」は「7つのリスク」に姿を変えつつあると、筆者は見ています。強気派にとっては「時間の問題」ですが、弱気派にとっては「時間こそが問題」と言えるでしょう。

本稿では、上記1の「流動性ブーム」について、考えてみます。


1. 流動性ブーム

多くのリスク資産価格を割高な水準に押し上げたのは、主要中銀による低金利政策とフォワード・ガイダンス、大規模資産買い入れ(LSAP)がもたらしたリスクテイクとポートフォリオ・リバランスだと考えられます。

ニューヨーク連銀が算出するACMモデル(Adrian, Crump, Moench 2013)に従えば、米国10年国債のターム・プレミアムは、2016年の大統領選挙を機にプラスに浮上したものの、翌年4月以降、再びマイナスに陥っています。

確かに、債券市場の参加者は、過去30年余りの期間において概ね正しかったわけですが、彼らがインフレや財政赤字の不確実性をほとんどプライシングした経験がないことは、金融市場全体にとっての重大なリスクとして認識される必要があるでしょう。一方で、以前よりも多くの米国企業が仕入価格の上昇や労働力の質を重要な問題と回答し、米国の連邦政府債務は世界金融危機から10年あまりの期間に(危機前の)3倍近くに膨らんでいます。

誤解を恐れずに言えば、主要中銀の金融緩和は、無責任なリスクテイクを奨励し、責任ある投資行動を罰してきたようなものと考えられます。こうした中、資本家によってパフォーマンスを競うよう求められる投資家は「他の投資家が(テクノロジー株式を)買うから、自分も(テクノロジー株式を)買う」という循環の中を漂っているだけに見えます。

流動性ブームに支えられたリスク資産は、完全雇用の壁(物価安定のための金融引き締め)、バリュエーションの壁(金融市場安定のための引き締め)、財政プレミアムの復活(長期金利の上昇)という壁にぶつかりつつあります。

年初以降、世界の株式市場やクレジット資産、新興国市場が軟調さを見せている要因の1つは、ようやく姿を現した米連邦準備制度理事会(FRB)によるQT(中銀の保有資産圧縮)でしょう。