貿易とは相互依存:米中貿易戦争は悪いことにはならない その 3

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/4/27 | 重見 吉徳

4月24日25日の続きです。

『米中貿易戦争』が話題になって久しいですが、筆者は「米中の通商関係は大事には至らない」と考えています。

その最もシンプルな理由は、「貿易とは相互依存」であるためです。つまり、「米国は中国に、中国は米国にそれぞれ依存しているために、互いに傷つけ合う可能性は低い」と考えています。

今日は、25日に続き、「中国がいかに米国に依存しているか」を考えてみます。

25日のエントリーでは、中国(を始めとする世界経済)は、自国の生産や雇用=今日の景気を、米国(の需要・消費)に依存していると、述べました。今日は、中国(を始めとする新興国)は、自国の経済成長≒明日の所得増加や豊かさを、米国(の需要・消費)に依存していることを見ていきます。

次に掲げるのは、Guide to the Marketsの15ページです。

Guide to the Markets -Japan- 2018年第2四半期 p15



【右図】を見てください。【灰色】は、米国を除く世界のGDP(世界全体のGDPに占める割合)を見ています。いわば、「米国以外の経済のシェア」です。【灰色】は、米国の貿易金額(米国のGDP比)を見ています。

このチャートから「なんとなく」わかることは、「米国の貿易が拡大するにつれて、米国以外の経済シェアが高まってきた」、ということです。

「米国以外の経済シェアが高まってきた」背景としては、①米国以外の地域、例えば、中国やインドなどの人口が増えたことも挙げられますが、②そうした国々の1人1人の生産量=所得が増えたことも大きいと考えられます。

戦後のドイツや日本、90年代以降の中国やその他のアジア諸国は、経済成長で「生活が豊か」になりました。言い換えれば、1人当たりの所得=生産量が増えてきたことを意味します。

1人当たりの生産量を増やすためには、設備投資や研究開発に資金を投じる必要があります。より高性能の機械を、より多く据え付け、より多くの労働者がそれらの使い方をマスターすれば、1人1人は、より価値の高いものを、より多く作れるはずです。

4月24日25日のエントリーの中で、米国の貿易赤字とは、「米国が身の丈以上に食べようとする意思の強さ」であることを確認しました。

戦後のドイツや日本、そして90年代以降の中国やその他のアジア諸国などは、米国が「がんばって食べてくれる」裏側で(米国を相手に)貯蓄をしたり、国内の消費を幾分抑制したりすることで、それらを元手に設備投資やインフラ投資を行い、経済発展を遂げてきました。いわば、投資依存・輸出依存の経済です。

これらの国や地域の輸出企業が受け取ったドルを、国内での設備増強などのために自国通貨に換金するときには、自国通貨が上昇圧力を受けますが、(これらの)中央銀行がそのドルを輸出企業から買い取ることで、輸出に不利となる自国通貨の上昇を抑制し、国内の輸出企業を支援してきた側面があります。また、このドル買いはしばしば国内の資金供給の増加を伴うために、国内の金融市場が緩和的になります。

中国は、まだまだ1人当たりのGDPが米国に及びません。IMF(国際通貨基金)の直近データによれば、米国の1人当たりGDP(名目)は、約62,000ドルであるのに対して、中国の1人当たりGDP(同)は、約10,000ドルです。 「豊かさ」で米国に追いつくためには、米国の消費や米国への輸出に幾分依存していく必要があると考えられます。

25日と今日の分をまとめれば、「中国は、今日の生活のためにも、明日の生活のためにも、米国に依存する必要がある」と、考えられます。

このため、中国は、米国に対して通商上の強硬さを貫くことは困難と考えています。