貿易とは相互依存:米中貿易戦争は悪いことにはならない その 1

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/4/24

久しぶりに書きます。

『米中貿易戦争』が話題になって久しいですが、筆者は「米中の通商関係は大事には至らない」と考えています。

その最もシンプルな理由は、「貿易とは相互依存」であるためです。つまり、「米国は中国に、中国は米国にそれぞれ依存しているために、互いに傷つけ合う可能性は低い」と考えています。

今日は、「米国がいかに中国に依存しているか」を考えてみます。

次に掲げるのは、Guide to the Marketsの14ページです。

Guide to the Markets -Japan- 2018年第2四半期 p14



まず、【左図】を見てください。【オレンジ色】は、米国の貿易収支(GDP比)です。米国は、【青色】の輸入が、【灰色】の輸出を上回っているために、貿易収支は赤字です。ですから、【オレンジ色】の貿易収支は、水準がマイナスです。直近は、GDP比で約3%の赤字です。

次に、【右図】を見てください。【オレンジ色】は、米国の対外貯蓄(GDP比)を見ています。マイナスですから、米国は「対外借り入れ」を行っています。

ここで左右の【オレンジ色】を眺めてください。両者の水準が似ていることがご確認いただけると思います。この図では、幾分の誤差があるものの、この両者は論理的に一致します(→偶然に一致するわけではありません)。つまり、「貿易赤字=対外借り入れ」です。

米国は、旺盛な内需を、中国(≒貿易赤字の相手)からの借り入れに依存しています(→それゆえに、筆者は、大事にはならないと考えています)。

なぜ、「貿易赤字=対外借り入れ」なのでしょうか。以下に確認してみましょう。この等式の左辺から、右辺を導きます。


1. 米国は、『貿易赤字』であり、輸出よりも輸入のほうが大きくなっています。言い換えれば「米国は作るよりも食べるほうが大きい」わけです。

2. 米国の現在の貿易赤字は、GDP比3%です。言い換えれば「米国は100作るが、103食べる国で、3が貿易赤字に相当」します。

3. ここで重要なこととして、生産量=GDP=所得です。米国は100作るわけですから、米国の所得は100です。

4. 食べる量は103ですから、米国は、所得が100なのに、103食べる国です。つまり、米国は、「身の丈」=所得以上の消費(や設備投資)を行っているわけです。資金の不足分は3ですが、これを『外からの借り入れ』で賄っています。

以上で、「貿易赤字=対外借り入れ」であることを確認できました。


米国にとってみれば、現在の消費や設備投資の水準を維持するためには、外国が米国の負債(米国国債を含む債券や、企業の株式など)に投資をしてくれたり、米国の資産(不動産など)を取得してくれたりする必要があります。

ひょっとしたら「消費や設備投資の水準を減らせばいい」のかもしれませんが、消費や設備投資を減らせば、その分だけ、需要が減るために、景気が大幅に悪化してしまう可能性があります。

加えて、トランプ政権は、①減税によって消費や設備投資を刺激しようとしていますし、②インフラ投資(=政府投資)も検討しています。これらはいずれも、需要の増加ですから、(米国の生産量が変わらないとすれば)貿易赤字の拡大要因となり、需要の「増加分」を海外からの「追加」借り入れで賄う必要があります。

トランプ政権は、減税やインフラ投資によって、「将来的」には米国の供給力が高まって、貿易赤字が減ったり、(景気の浮揚も含めて)税収が増えたりすることを期待しているようですが、どうなるかはまだわかりません。

いずれにせよ、米国は旺盛な需要を、中国からの借り入れに依存しているために、中国に対して通商上の強硬さを貫くことは困難と考えています。(重見 吉徳)