貿易問題だけでなく、米国のインフレにも再注目。インフレ加速で、PERは低下基調に?

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/4/10

米国のインフレ率が加速する見通し

米中の貿易をめぐる動向に加えて、明日発表される米国の3月の消費者物価指数(CPI)に注目しています。市場予想によれば、食品とエネルギーを除いたコアCPIが、前年比で+2.1%に加速する見込みとなっています(注:4/10時点、2月は同+1.8%)。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視するコアPCEデフレーターの前年比も、3月から加速し、今後は+1.9%以上で推移する可能性があると見ています(注:+1.9%はFRBの今年の物価見通しの中央値、2月は同+1.6%)。

インフレが加速すると金融市場にどのような影響が出る?

①短期的には、米国の長期金利が一時的に上昇するリスクがあるほか、②中期的には、米国株式の株価収益率(PER)が低下トレンドに入る可能性に注意したいところです。②について、下図の網掛け部分を見ると、ITバブルに沸いていた1999年以降や、米国の住宅バブルが見られた2004年以降のように、インフレ率が2%未満から加速し始めると、予想PER(12ヵ月先)はそれまでの上昇トレンドから下落トレンドへと転換したことがわかります(補足:世界株式ベースでも同様の傾向が確認できます)。
このような転換が見られた背景としては、インフレ率が低迷していた期間のFRBの“緩和的な”金融政策に、もはや頼れなくなったことで、投資家の強気姿勢が弱まったことなどが考えられます*。実際に、インフレが2%に向けて加速し始める前後の1999年6月や2004年の6月からFRBの利上げが始まっており、今回はインフレの加速をうけて、利上げペースが加速する可能性があります。
過去2回の局面と同様に、これから予想PERの下落トレンドが続くならば、「前よりも、割安になったから買いだ」というような投資判断は、しばらく避けたほうが良いかもしれません

*米国国債利回りの上昇が、米国株式の益利回り(PERの逆数)の上昇に繋がり、PERが低下するという見方もできます。

株式市場の見通しは?

株価は、予想PER×予想1株利益(EPS)で求めることができます。米国株式の予想EPS(12ヵ月先)は、(今後上昇ペースが鈍化するとみているものの)景気後退懸念が出てくるまでは、低下基調に転じることはないと見ています。また、短期的には、米中の貿易摩擦が一段落したことが確認できれば、株価は反発するでしょう。但し、中期的にみれば、インフレが加速する状況下でのPERの低下トレンドが下押し圧力となり、株価は上がりにくくなると見ています

(前川 将吾)


米国のインフレ率と米国株式のバリュエーション

出所:米連邦準備制度理事会(FRB)、米経済分析局(BEA)、S&P Dow Jones Indices LLC.、I/B/E/S、Datastream、Bloomberg Finance L.P.、J.P. Morgan Asset Management
注:「株価収益率(PER)」は、アナリストのコンセンサス予想1株利益(EPS、12ヵ月先)に基づく。「FRBによる各年末見通し」は、FRBが3月、6月、9月、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で公表する、「Summary of Economic Projections(経済見通しの要約;SEP)」に基づき、それぞれ「2018年末」、「2019年末」の見通しに対応する。「米国のコア・インフレ率」は、個人消費支出(PCE)デフレーター(食品・エネルギーを除く)の前年同月比。
データは2018年3月31日時点で取得可能な最新のものを掲載。