なぜ貿易戦争で株価が下がるのか?

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/3/23

昨日22日の米国株式市場で、株価が比較的大きな下落を見せました。「貿易戦争への懸念で株価が下落した」と解説されています。

トランプ大統領は同日、米通商代表部(USTR)に対し、中国による知的財産権侵害を理由に、最大600億ドル規模の同国製品に制裁関税を課すよう指示する大統領令に署名しました。

また、23日朝の各報道によれば、中国商務省が、米国の鉄鋼製品やアルミニウム、豚肉やワインなど、約30億ドル相当の輸入品に関税を上乗せする準備をしていると発表しています。

なぜ、貿易戦争への懸念で株価が下がるのでしょうか。

ひとことで言えば、経済活動が停滞する≒我々の給料が下がる≒買えるモノの量が減る恐れがあるためです。今日はこれを考えてみます。

貿易は「国境をまたぐ取引」ですが、まずは国境を忘れて、日本国内だけを想像してください。我々は毎日、モノやサービスを購入します。それは毎日、他者と貿易=取引を行っているのと同じです。「貿易」を止めれば、我々は必要なものすべてを自分で作る必要があります。

一般に、あるモノやサービスを作るのに必要な技能を持っている人が作るほうが、そうした技能を持っていない人が作るよりも、たくさんの量を作ることができます(→それは楽曲やコンサートでも同様です)。それぞれが専門に特化するとき、経済全体の生産量=我々の消費できる量を最大化することができると考えられます。

例えば、米国の関税引き上げや輸入制限に対して、中国やEU(欧州連合)が対抗措置を取ることで、貿易が停滞することは、全体の生産量が減る可能性を意味しますし、逆に考えれば、世界経済は、これまで貿易を拡大することで、貿易がなかった状態に比べ、よりたくさんのモノやサービスを生産していると想像できます。

次に、ミクロ的な観点に立って、企業業績の動向を考えてみましょう。米国の保護貿易主義とは『世界版のBREXIT』と考えられます。例えば、日本の自動車メーカーはメキシコで生産した自動車を米国に輸出していますが、米国とカナダとメキシコで組織するNAFTA(北米自由貿易協定)が見直しや再構築することになれば、交渉が続く限り、どこに工場を置くことが=設備投資を行うことが適切かどうかを見極める必要が生じます。また、米国に工場を移転せざるを得ないと判断される場合には、生産コストが高まる恐れがあります。

それでは「自由貿易が良い」のでしょうか。「100%良い」と言い切ることはできません。上記のように、一国全体では貿易によって利益が得られる一方、国内では、国際的に見て競争力のある主体の所得は増加する一方、競争力のない主体の所得は減少するという形で、所得の再分配が生じることが知られています。

それでは今後はどうなるのでしょうか。

残念ながら、それは誰にもわかりません。例えば、株価下落を恐れ、トランプ大統領が突然、保護貿易を取り下げるかもしれません。どちらに行くかわからないからこそ、当面は徹底した分散が重要でしょう。(重見 吉徳)