2018年の変化③「世界の実体経済:成長の加速→鈍化」その 2

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/3/12

2月分の雇用統計でも確認されたように、足元の米国景気は非常に堅調です。米国景気にけん引される形で、世界景気も今しばらくの間は堅調さを維持するものと見込みます。

ただし、景気はその勢いに関する限り(短期的な)ピークに近く、(中期的の視点に立てば)雇用も完全雇用に近づいているために賃金の伸びもトレンドとしては拡大傾向です。それゆえ、インフレ懸念が高まって長期金利が上昇したり、利上げの先読みが強まって短期金利が上昇しています。長期金利の上昇は景気を自律的に、政策金利の引き上げは景気を意図をもって、引き締めていきます。

金利の上昇により、年後半にかけ、景気は幾分鈍化をすると見込んでいます。それに従って株価は上がりにくくなると見込んでいます。

誤解のないように書き添えますと、「景気は鈍化する」と見込んでおり、まだ「景気が後退する」とまでは予見していません。景気の拡大は続くけれども、その勢いが鈍るといったイメージです。

「景気の拡大が続く」のであれば、「景気は良いのだから株価も堅調」と思いがちですが、データは必ずしもそうではないことを示しています。

以下に掲げるのは、Guide to the Markets 2018年第1四半期版の12ページです。

Guide to the Markets -Japan- 2018年第1四半期 p12



ここで見ているのは、世界株式の業種別リターンの傾向(過去の平均値)です。ここでは、米国の製造業景況感を示すISM製造業景況感指数で場合分けをしています。ISM指数は「水準50が景気拡大と景気後退の境界線」と言われます。

【左側2つ】が「ISM製造業景況感指数が上昇している」とき、【右側2つ】が「ISM指数が低下している」ときの、業種別リターンをそれぞれ示しています。【上段】【下段】の区別は、【一番左側の軸】に記してあるように、【下段】が「ISM指数が50から55まで」、【上段】が「ISM指数が55から60」までです。

例を挙げれば、【左下】は「ISM指数が50から55の範囲内で、前月から上昇傾向にある」とき≒「50から55にかけて上がっていく」とき、【右上】は「ISM指数が55から60の範囲内で、前月から低下傾向にある」とき≒「60から55に向かって下がっていく」とき、の業種別リターンを見ています。

ISM指数が上がっているとき【左側2つ】は、株価が上昇傾向にあり、しかも【オレンジ】で示した景気敏感セクターの上昇がより大きいことがわかります。

一方、ISM指数が下がっているとき【右側2つ】は、株価が上がりにくくなり、【オレンジ】で示した景気敏感セクターの上昇がより鈍くなる(場合によっては下落傾向となる)ことがわかります。

言い換えれば、景気が「加速」から「減速」に移ると、株価は次第に上がりにくくなる傾向が示されます。

 

ISM製造業景況感指数は今後「上昇」から「低下」に針路を変えるのでしょうか。その可能性は高いと見込んでいます。

次に掲げるのは、Guide to the Markets 2018年第1四半期版の11ページです。

Guide to the Markets -Japan- 2018年第1四半期 p11



【上段の灰色ライン】が、そのISM製造業景況感指数です。これを見ると、3つの特徴を読み取ることができます。①上下動を繰り返し循環すること、②なんとなく上限があること、③のこぎりの刃のようにギザギザに動くことです。

右上に記載のとおり、昨年12月末時点で得られた数値は59.7でしたが、直近2月の値は60.8まで上昇をしています。

過去の経験則に鑑みれば、①循環をし、②既に上限に近く、③ギザギザと動くことから、遅くとも半年くらい先には低下傾向に移っていると考えています。また、足元の金利上昇がこの可能性を高めると考えています。

景気の鈍化に沿って「株価が上がりにくくなる」ということは、キャピタル・ゲインを得られにくくなるということですから、高配当株式などのインカム・ゲインの重要性が高まります。また、先に掲げた12ページの【水色】であるディフェンシブ・セクターが下値抵抗力を発揮します。高配当株式とディフェンシブ・セクターは、似たような性格上、同じような銘柄で構成される傾向にあります。

インカムと言えば、債券をイメージしがちですが、今年は、インフレ懸念や量的金融緩和の出口観測もあり、その背景は好景気ということですから、債券には金利上昇のリスクがあります。したがって、高配当株式を含む幅広いインカムで分散投資をすることがよいと考えられます。

また、今年は景気の局面変化(過熱→鈍化)が想定されますから、アクティブ運用の重要性が高まると考えています。

例えば、昨年のように「景気が良いまま」ならば、「何も考えずに株一本で」「ノーロードのインデックス・ファンドで」といったことも考えられるかもしれません。

しかし、今年はそれで終わらず、既に「インフレ懸念」や「引き締めによる景気の鈍化」が金融市場のテーマとして付加されています。

局面の変化を捉え、資産配分やセクター配分、銘柄選択を積極的に行うアクティブ・ファンドの真価が試される局面です。(重見 吉徳)