2018年の変化③「世界の実体経済:成長の加速→鈍化」その 1

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/3/9

このブログをスタートしたのは1月22日ですが、その初回で「2018年は3つの変化」に注意が必要と述べました。それぞれ次のとおりです。

1. 米国の物価:ディスインフレ→インフレ
2. 主要国の金融政策:金融緩和→出口や引き締め
3. 世界の実体経済:成長の加速→鈍化

上記3つのうち1つ目と2つ目については既に書きました。その後、1月の終わりから、1つ目の「インフレ懸念」が長期金利の上昇につながり、マーケットを大きく揺さぶりました。

今年の夏頃から2つ目の「出番」が来ると見込んでおり、「主要中銀の出口観測」やこれに伴う金利の上昇によって、金融市場の調整色が強まると考えています。特にECB(欧州中央銀行)は、今年の秋もしくは来年から量的金融緩和を完全に取り止めると見込まれ、これを金融市場が織り込みに行くタイミングを今年の夏頃と見ています。

話が少し逸れましたが、3つ目についてはまだ書いていませんでしたから、今日はこれを書きます。今年の実体経済や金融市場の見通しを、言葉でまとめると、次のとおりです(→大変遅くなりましたが、見通しは1月12日に弊社ウェブサイトに掲載をしたQuarterly Perspectivesから変わっていません)。

1. 景気は十分に強いのに『トランプ減税』による景気刺激が加わる(→インフラ投資も検討中)。
2. それゆえ、景気の過熱懸念や実際の過熱が、インフレ懸念や実際のインフレにつながってしまう。
3. つまりは、長期金利の上昇や短期金利の引き上げ(=利上げ)が生じる。
4. 金利が上がるのだから、実体経済は引き締め圧力を受け、景気は鈍化に向かう。
5. 株価やリスク資産価格は、年前半は上がるかもしれないが、年後半にかけ、上がりにくくなる。

これらを表にまとめると次のとおりです。

【図】2018年の経済・金融市場の見通し

 

重要なポイントは、景気が循環するということです。

人々は、不確実な将来に対する予想に基づいて判断や行動をし、その判断や行動が(人々が予想をしようとした)将来を形成する・将来に影響を与える以上(=相互作用の構造)、景気は変動を持ちます。

過去のデータを見ても、実体経済は潜在成長率を上回る成長を経験した後、潜在成長率の水準にぴたりと着陸=鈍化することはほとんどありません。過熱の反動として潜在成長率を下回る成長率を経験することが多く見られます。

Guide to the Markets -Japan- 2018年第1四半期 p7



労働力や資本(≒生産機械)に未稼働・遊休の部分があれば、言い換えれば、生産がフル稼働に至るまでは、強めの経済成長が期待でき、物価の上昇圧力が鈍いままに留まることが想定されます。

その後、実際の生産が生産能力・キャパシティに達すると、それを超える生産には、景気の過熱による物価の上昇が伴います。物価は『経済の体温計』です。多くの中央銀行は「物価の安定」を目的としていますから、物価の上昇を見込むと、利上げに代表される金融引き締めを開始します。すると、実体経済が引き締め圧力を受けることで、景気が「過熱」の局面から、「鈍化」の局面に移り変わっていくことが想定されます(→もし景気の過熱が収まらないのであれば、中央銀行は引き締めを強化するでしょう。

ただし、前回2月28日のエントリーでも述べたとおり、金融引き締めは(論理的に考えて)遅くなる分、景気は(人々の心理のせいもあって)必要以上に過熱をし、その後、中央銀行は急速な引き締めを迫られ、結果として、物価や景気をうまくコントロールできずに(=景気が鈍化に留まらず)、景気後退に向かうというパターンも存在します。

一方、設備投資を行って、生産能力そのものや生産性を拡大させることで、生産量を増やすことも考えられます。ただ、景気後退の別のパターンは、企業が景気の見通しに強気になり、設備投資を積極化させたときが景気のピークで、その後、(家計などの心理を変化させる)何らかのショックが生じて需要が減退し、生産調整と共に、不要となる追加の設備投資が手控えられるというものです。②に続きます。(重見 吉徳)