『ビハインド・ザ・カーブ』再び?引き続き、長期金利の上昇に警戒。

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/2/23

今朝の一部紙には、21日水曜日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨について、金融市場は、利上げに積極的な「タカ派」と受け止めた、と書かれています。今後の資産市場の見通しを考える上で、この点は重要なので少し考えてみます。

確かに、米国の株式市場を見ていると(水曜日に株価は下落したわけですから)「積極的な引き締めによる景気減速を嫌気して株価が下落した」ようにも思えます。真の要因もそうなのかもしれません。実際には「真の要因」は誰にもわからないままで、私を含む評論家の後講釈が広がってしまうだけなのですが、私の後講釈は異なります。

FOMCの姿勢が「利上げに積極的」との受け止め方であれば、昨年1年を通じて観察されたように、例えば2年国債利回りなどの短めの金利が上昇をし、10年国債利回りなどの長めの金利は上がりにくくなる、イールドカーブのフラット化*が進んでいたはずです。そして、昨年1年と同様に、長期金利が安定する中で、株価は上昇していたはずです。

*金利が上昇しながら、イールドカーブがフラット化することを、ベア・フラットニングと言います。


実際には、これとは逆で、短期金利よりも長期金利のほうが上昇する、イールドカーブのスティープ化(→ベア・スティープニング)が見られました。この、昨年とは対照的な「イールドカーブのスティープ化」は今年これまでのトレンドなのですが、このトレンドは(更なる利上げの必要性を示した)今回の議事要旨をもってしても変わりませんでした。また「長期金利の上昇と株価の下落」も、今年これまでのトレンドと同じでした。

議事要旨の後に、「長期金利が抑制されず、上昇してしまった」という結果を考えれば、私の後講釈は今回の議事要旨は「利上げに消極的なハト派的だった」との受け止めです。もっと言えば、何であれ「まだまだ長期金利の上昇は収まりそうにないな。債券市場はまだ長期債を買い戻す確信を持てていないんだな」と受け止めました。

筆者は、この議事要旨が出る前の時点において、遅くとも次のFOMC(3月20-21日開催)までには、(3月分のみならず、その先を含めた)利上げ見通しがさらに強まって、短期金利がさらに上昇をし、長期金利が落ち着きを取り戻すと共に、株価が若干かつ一時的に回復すると見込んでいました。マーケットは、一気に下がることはあまりなく、「戻り」を伴いがちです。3月のFOMCがこのきっかけになると考えていました。今も、メインシナリオとして、この見通しは変えていません。

ただ、筆者はごく最近になって、例えば3月のFOMCにおいて、米連邦準備制度理事会(FRB)が、昨年12月に公表した「2018年中に3回」の利上げ見通しを、「年4回」に引き上げたとしても、長期金利の上昇が収まらない可能性も少なからずあると見始めています。こう考える理由は2つあります(→実際には、この両者は密接に結びついています)。

1つめの理由は、金融市場がFRBの引き締め姿勢を依然として、利上げに消極的な「ハト派」と読んでいるためです。金融市場は、3月の利上げ確率は「8割以上」と見込んでいるにも関わらず、年間を通じてみれば「年3回以下の利上げに留まる」との見通しがまだ7割以上に留まっています。言い換えれば、金融市場の利上げ見通しは「時期が前倒しされただけで、回数の見通しは変わっていません」。実際、一部のFOMCメンバーからは引き続き、利上げに対して非常に消極的な意見も発せられています。

この先、たとえインフレ懸念が高まっても、金融市場は引き続き「FRBは利上げに慎重な姿勢を貫く」と見込んだままならば、インフレ懸念や実際のインフレ率は抑制されず、債券市場の参加者は長期の米国国債を安心して保有できなくなり、長期金利がさらに上昇してしまう恐れがあります。

もう1つの理由は、FRBがインフレ懸念に対して、利上げに積極的な姿勢に転換するとしても、利上げ見通しを「一気に」引き上げることは困難である可能性があります。例えば、昨年12月に公表した「2018年中に3回」の利上げ見通しを、次の見通し公表のタイミングである3月のFOMCで(「年4回」でなく)「年5回」に引き上げるとすれば、マーケットは「急速な引き締め」を恐れるでしょう。なぜなら、過去の典型的なパターンは、FRBの利上げが当初は後手に回り、後になってから利上げを急いで積み重ねてしまうことで(≒急ブレーキをかけてしまうことで)、景気を必要以上に引き締めてしまった(→オーバーキルと言われます)と指摘されているためです。

まとめれば、利上げに積極的になること自体は適切としても、ゆっくりとしか利上げ見通しを引き上げられない恐れがあります。

このようにインフレ懸念に対して、利上げが後手に回って、インフレ懸念が抑えられず、長期金利が上がってしまうことを『ビハインド・ザ・カーブ』と言います。債券市場がインフレ懸念を抑制するために必要だと考える利上げの幅やペースよりも、FRBの利上げが遅くなってしまう状況です。

最近の金融市場の動きに基づけば、長期金利が上昇したり、その変動性が高まったりする場合には、資産市場全体が調整してしまう恐れがあるため、十分な注意が必要です。

月並みな結びですが、来週2月28日には、半年に1度のFRB議長による議会証言が予定されています。パウエルFRB議長は、以前よりも利上げに積極的な姿勢を示すと思われますが、この結果、イールドカーブがフラット化するかどうかに、筆者は注目しています。(重見 吉徳)

Guide to the Markets -Japan- 2018年第1四半期 p19