「ファンダメンタルズが堅調だから、株価下落は一時的」は本当か?

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/2/15

筆者は1月31日のエントリーで「疑うことが重要」と述べました。

最近の株価急落の反応として「ファンダメンタルズが堅調だから株価下落は一時的」との声が聞かれます。
*ファンダメンタルズとは、経済の基礎的条件を指します。簡単に言えば、実体経済のことです。

これは信頼できる主張でしょうか。筆者は必ずしもそうではないと考えています。なぜなら、①我々が現在観測できる経済指標は過去の数字であり、②株価は将来を先読みして動くためです。

確かに今後しばらくは堅調な経済指標が観測される可能性があります。理由は3つあるでしょう。

1つは「世界同時好景気」が続いていた今年1月分の経済指標が発表されてくることです。次に、物価指標(インフレ率)などは遅行性があり、生産や消費などの実体経済の指標に遅れて伸びてくる可能性があります。さらに、米国の減税が景気を押し上げる可能性があります(→金融市場がそのような見込みを持っているために、年初から長期金利が上がっているわけです)。

ただし重要な点は、それと株価との関係性は必ずしも論理的とは言えず、強固とも言えません。その理由は上記①と②で述べたとおりです。例えば「(今後しばらくは景気が堅調と見ていても)年後半には景気はスローダウンしていく」と見ていれば、株価は(今から)上がらなくなることも考えられます。

ここまでは、「実体経済の指標と株価とは必ずしも一対一対応ではない」という点を考えてみました。言い換えれば、以上は、経済や金融市場に関する筆者の見通しではなく、よくなされる主張をどう考えることができるのかを見たまでです。

実は以上が今日の本題なのですが、改めて、今後の株価がどうなっていくかをお伝えします。

悪いことに、経済学や経済の長期的な蓄積が示すとおり、完全雇用下の減税政策ゆえにインフレ懸念が生じています。インフレ懸念は、これまでの『低インフレ環境の継続』という上昇相場の大前提を覆す出来事です。

これまでは「低インフレだから中央銀行は低金利政策を継続する。引き締めは緩やかだからリスク資産は買いだ」という考え方が存在したように思えます。あるいは「先進国の中央銀行が国債を買い取る。国債は買えなくなるから社債や株式にお金を振り向けるほかない」という状況がリスク資産の需給を引き締めて価格を押し上げてきたわけです。

しかし、2月9日のエントリーでも述べたとおり、インフレ懸念が生じると、米連邦準備制度理事会(FRB)としては、以前よりも(あるいは金融市場が予想しているよりも)積極的に政策金利を引き上げざるを得ません。そうしなければ、インフレ懸念は抑制できない恐れがあるためです。あるいは、FRBが利上げの手を緩めるようなことがあれば、政策金利が上がらない代わりに(最近のように)長期金利が上がってしまうのです。

政策金利が上がるにせよ、長期金利が上がるにせよ、実体経済は引き締められます。例えば、借入金利の上昇に直面し、設備投資を抑制する企業が少しずつ出てきます。預金金利の上昇で、消費から貯蓄に回そうという家計が少しずつ出てきます。これが、消費や投資といった実体経済の基礎項目にブレーキを掛けます。

筆者は、金融市場は今後、1)「低金利政策だから買い」というゲームのルールが変わること、2)金利の上昇によって実体経済に引き締め圧力がかかること、の2つを、以前よりも鮮明に認識し始める中で、株価は上がりにくくなると見ています。

引き続き、日本の個人投資家にとっては、①分散投資の徹底、②(キャピタルゲインに頼りにくいために)インカムゲインをリターンの主要な源泉と考える、③円ヘッジが重要**と考えています。

**「円ヘッジが重要」と考える理由については、2月9日のエントリーをご参照ください。

(重見 吉徳)