利上げを求む。

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/2/9

金融市場は混乱を続けています。

おそらく問題は、主要国の低金利政策と、米国の減税にあるでしょう。主要国の低金利政策は持続不可能なまでの株高を演出してきました。また、その低金利政策や金融政策正常化の緩慢なペースと、米国の労働市場が完全雇用の下で実施される『トランプ減税』の両方が、インフレ懸念につながり、長期金利の急上昇や不安定化を招いています。そして、低金利環境に依存してきた金融市場は変動性が高くなっています。

ここから直ちにわかるように、減税を元に戻せない以上、「利上げのペースを緩めれば、マーケットが落ち着きを取り戻す」というわけではありません。むしろ、この逆です。すなわち、減税が走ってしまっている以上、インフレ懸念を抑え、マーケットを落ち着かせるために必要*なのは、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの継続姿勢です。

利上げを継続する姿勢を示せば、マーケットは、将来、実体経済が鈍化し、インフレ率も落ち着いていくことを読み取り、この過程で、長期金利は落ち着きを取り戻すと考えられます。

さらに展開をすれば、今まで、長期金利が低位安定をしてきた理由は、低体温経済・ぬるま湯経済に基づく低インフレだけではありません。FRBによる利上げも長期金利の押上げ圧力として効いてきたと考えられます。過去にFRBが利上げを継続する期間においては、イールドカーブがフラット化をしています。言い換えれば、短期の市場金利は政策金利の引き上げによって上がりますが、長期金利は先に述べたように、(利上げの後に予見される)将来の実体経済の鈍化を読み取って、上がりにくくなります。

金融機関やファンドなどの機関投資家にとっては、フラットニング・トレード(=短期金利の上昇と長期金利の安定により、長短金利差の縮小に賭ける取引)は、コンセンサス・トレード(=誰もがその方向に進むとの合意が取れそうな取引)でした。仮に、FRBが(昨今の金融市場の混乱を受けて)利上げを休止する姿勢を示せば、フラットニング・トレードを安心して継続保有することができなくなります。最悪の場合、投げ売りといった形で、長期金利が更なる急上昇を見せる恐れもあります。

繰り返しますが、減税が走ってしまっている以上、必要なのは、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの継続姿勢です。

ただし、利上げの継続は、実体経済に引き締め圧力として効いてきます。したがって、筆者が見込むように、年後半には景気の減速が実感されるでしょう。それは、実体経済の鈍化、すなわちファンダメンタルズの悪化を伴う以上、目先の金融市場の混乱よりも、より長期的な悪影響を株式市場にもたらす恐れがあります。

筆者はもはや年内においては、一時的な戻りは期待できても、上昇相場は望み薄と考えています。

また、ドル売りが新たな「コンセンサス・トレード」になると考えています。なぜなら、短期的には米国の保護主義や財政悪化、インフレに対する懸念がくすぶり、中期的には米国が景気後退に行くために利下げによってドル安が生じる恐れがあります。ドル安が進むと、ドル円相場はドル安・円高に向かうわけです。

以上をまとめれば、日本の個人投資家にとっては、①分散投資の徹底、②(キャピタルゲインに頼りにくいために)インカムゲインをリターンの主要な源泉と考える、③円ヘッジが重要と考えています。

*それでも落ち着かない場合には(「ペンキが乾くのを待つのと同じくらい退屈なものになる」と表現されたこともある)保有債券の売却=バランスシートの縮小・正常化をいったん停止することが考えられます。「債券売却の一時停止」のほうが「利上げ継続」よりも効果があるかもしれませんが、金融政策の方針を転換すると受け止められる可能性があるため、決断が難しく、まずは「利上げの継続」で様子見をしたいところです。(重見 吉徳)

 

 

Guide to the Markets -Japan- 2018年第1四半期 p25