相場環境は変わった。当然、投資戦略も変えるべき。

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/2/7

前回(2018/2/5)のブログでは、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引き締め強化への懸念が高まる中で、米国株式と米国10年国債の価格リターンの逆相関が弱まっているという点に注目しました。また、過去の歴史に学ぶと、これが仮に順相関に転じると、その後に米国株式の上昇相場の「終わりが始まる」可能性も指摘しました。

前回のブログでも言及していますが)ここで注意すべき点は、あくまでも「終わりが始まる」ということであり、「“すぐに”終わる」わけではないということです。過去20年間で米国株式と米国国債が順相関に転じたことは3回ありましたが、いずれの局面も、順相関に転じた後に①米国株式のリターンは低下し始めますが、②米国株式が“本格的な”下落相場に突入するまでには、1年数ヵ月の期間を要しています。これを投資家の立場にあてはめて考えれば、①米国株式投資に期待するリターンを引き下げる必要がある一方で、②“すぐに”米国株式への投資をやめてしまう必要はない、ということになります。

このように、当面は米国株式への投資を継続しても問題ないと考えているものの、昨年の『適温相場』が既に終わっている(→もはや緩和的な金融政策に頼ることができなくなっている)可能性が高い点には注意が必要でしょう。筆者は、(ⅰ)景気が力強く、米長期金利も上昇する局面がもうしばらく続いた後に、(ⅱ)景気は鈍化し、米長期金利も低下する局面に転じると見ており、その転換点としては、今年の半ば頃を想定しています。そして、局面が変わるのであれば、当然、採るべき投資戦略も変えていくべきだろうと考えています。

(ⅰ)景気は力強く、米長期金利も上昇する局面の投資戦略:高PERの株式への投資は避け、割安かつ景気敏感な株式への選別投資を検討したい。

  • 年初来の金融市場の動向を振り返ると、金利の上昇がきっかけで株式市場が調整した主な背景は、「景気や業績は良好でも、金利が上昇すると、株価の割高さが正当化しにくくなる」というものでした。足元の景気の強さやトランプ政権の景気刺激策を考慮すれば、米国のインフレ懸念や財政悪化懸念がすぐに払しょくされるとは考えにくく、株価の割高感も解消されていないため、突発的に「金利上昇→株安」が再発する可能性には引き続き警戒すべきと考えます(→『流動性相場の巻き戻し』、米国株式と米国国債が順相関に向かう動き)。
  • この点を踏まえれば、インターネット販売・カタログ販売(PERは約90倍、アマゾンなどが含まれる)やインターネットソフトウェア・サービス(PERは約26倍、フェイスブックなどが含まれる)など、一部の高PERのハイテク株への投資には慎重姿勢で臨みたいところです。
  • 一方で、①景気拡大の恩恵を受け、②金利上昇が追い風となり、③相対的に割安な商業銀行や保険(ともにPERは約13倍)などの一部の金融株は、相対的に良好なパフォーマンスとなる可能性があると見ています。
※注:グループの分類は、S&P 500のGICS Industryベース。PER(12ヵ月先、予想、2/2時点)の出所はFactset。個別銘柄の推奨を目的として示したものではありません。


(ⅱ)景気は鈍化し、米長期金利も低下する局面の投資戦略:景気敏感セクターへの投資は避け、ディフェンシブセクターや高配当株式への選別投資を検討したい。

  • 「今年のインフレ率の加速」を想定するFRB(米連邦準備理事会)は、年3回か4回の利上げを実施し、昨年よりも金融引き締めを強化すると見ています。「緩和的な金融政策に頼ることができなくなる」という点は、投資家のリスクテイク姿勢を弱めるだけではなく、消費者や企業経営者のマインドも徐々に冷やしていくと見ており、年の半ば頃には景気が鈍化傾向に転じると見ています(注:景気の鈍化とは、景気後退ではなく、景気拡大のペースの減速を意味しています)。
  • 景気が鈍化すると、株価は上がりにくくなり、やがて米長期金利も低下傾向に転じると考えられます。また、このような局面では、「景気悪化懸念→株安→金利低下」という相場展開が、昨年よりも発生しやすくなると見ています(→『典型的なリスクオフ』、米国株式と米国国債が逆相関を強めていく動き)。
  • 景気が鈍化する局面では、どのような投資戦略が有効なのでしょうか。下の右上や右下の棒グラフを見ると、たとえ米国のISM製造業景況感指数が55や50を上回っていても(企業景況感が悪くなくとも)、景況感の方向が下がっていれば、ディフェンシブのセクターのパフォーマンスが景気敏感セクターよりも良好だったことがわかります。また、①ディフェンシブな性格をもつとともに、②米長期金利の低下も追い風となる高配当株式への投資も検討したいところです。

 

 

Guide to the Markets -Japan- 2018年第1四半期 p12


 

以上の内容をまとめると、次の2点が重要と考えています。

  1. 今年は局面の変化を意識し、それに合わせて機動的に投資戦略も変更することが重要でしょう。第1に、昨年の『適温相場』が既に終わっている可能性があり、第2に、年の半ば頃を目処に、(ⅰ)景気加速→(ⅱ)景気鈍化へと局面が変わる可能性があります。この点を踏まえれば、常に相場と対峙し、局面変化のタイミングを見極めることが困難な個人投資家は、プロのアクティブ運用を活用することが1つの手かもしれません。
  2. 『適温相場』のもとで最も上昇してきたハイテク株の動向には、警戒すべきと考えます。ハイテク株には高PERかつ景気敏感な銘柄が多くあると考えており、これらは(ⅰ)の局面でも、(ⅱ)の局面でも逆風となる可能性があります。

 

(前川 将吾)