2018年の変化②「主要国の金融政策:金融緩和→出口や引き締め」

ストラテジストのいまを読み解くブログ | 2018/1/30

今日は先に進んで、2018年に生じうる変化の2つ目、「主要国の金融政策:金融緩和→出口や引き締め」について考えてみます。

1つ目に挙げた「インフレが生じる」よりも生じる可能性は低いと考えていますが、世界が『同時引き締め』の局面に移行する恐れも排除できません。世界の多くの中央銀行は、足元の『世界同時好景気』を足がかりとして、金融引き締めを始めるか、マイナス金利や資産買い入れなどの非伝統的な金融政策からの出口戦略を模索するかもしれません。

既に、米国やカナダは利上げを重ねていますし、中国人民銀行(中央銀行)は金融引き締めや金融規制の強化の方針を明らかにしています。これらの国々では2年国債金利が引き締めを先読みするように上昇を続けています。言い換えれば、短期の市場金利は実体経済に対して以前よりも引き締め的になっています。

次に、国債などの金融資産の買い入れ(≒量的金融緩和)を考えると、欧州ではスウェーデンが資産買い入れを既に停止、欧州中央銀行(ECB)もこれと同様に資産買い入れの停止を模索しています。日銀・ECB・FRB(米連邦準備制度理事会)の主要3中銀による金融資産の買い入れは、今年の後半にもそれまでの「買い越し」から「売り越し」に転じる可能性があります。

 

 

Guide to the Markets -Japan- 2018年第1四半期 p8



「売り越し」ということは、私が「中央銀行」、読者の皆さんが「債券市場」であるならば、私が皆さんに国債を売りつけるわけですから、皆さんは私から国債を受け取る代わりに、私に決済代金を支払わなければなりません。これは、中央銀行が資産買い入れによって供給した流動性(≒マネー)を回収するということです。そして、国債の売り越しは長期金利に上昇圧力を掛けることで、実体経済に対して以前よりも引き締め的になる可能性を抱えています。

金融引き締めを行ったり、出口戦略を模索したりする理由は、景気回復と共に少なくない国々で不動産価格の高騰が生じていることも挙げられますが、将来景気後退に陥るときのことを考えても明らかです。例えば、米国が景気後退入りするときには、米国が世界最大の貿易赤字国であり、「世界の消費者」の役割を担っている以上、世界の多くの国々の実体経済に悪影響が及ぶでしょう。そのときには、FRBは積極果敢な金融緩和を実施するはずですし、逆に言えば、そのタイミングで最も金融緩和の余地が少ない国が、(金融緩和が必要であるにも関わらず)「通貨高という金融引き締めの圧力」を受ける可能性があります。

米国や中国という大国が金融引き締めを開始している以上、他の中央銀行は、「世界の景気が良い現在のうちに引き締めを行って(自国通貨高により)幾分しんどい思いをしておくのか、世界の景気が悪くなった将来時点において(緩和の余地がなく、自国通貨高に陥って)もっとしんどい思いをするのか」の選択を迫られています。金融政策や財政政策が「景気循環の波を均す」ために存在している以上、中央銀行はこの前者のように動くことが本来の役割と言えます。この前者を実践し、ドル高という引き締め圧力を乗り越えたのが、2014年後半からの米国経済です。

この意味では、現在の景気拡大の局面は、多くの中央銀行にとって金融引き締めを模索する責務や意義がある局面と言えるでしょう。ただし、どの中央銀行も同じことを考えて出口に立とうと試みれば、あるいは金融市場がそのように解釈をすれば、過剰な流動性に支えられた上昇相場は突然終わりを告げる恐れがあります。

現時点で、主要国の中央銀行は、利上げや金融緩和からの出口のプロセスを(実行するとしても)かなりゆっくりと行う旨を表明しています。したがい、現在の流動性相場はまだ続いていくかもしれません。一方で、短期や長期の市場金利の上昇は(流動性相場を崩壊させずとも)景気の循環を「拡大」から「鈍化」へと変化させていくように働くと考えられます。(重見吉徳)